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「自分自身を知るために」

東アジアは、日本が属している、日本と地理的にも歴史的にも最も近いというだけでなく、世界の中でも大変重要な意味を持った地域である。

特に朝鮮半島は、古くから日本と最も密接に関わってきた。最近調査が進んでいるキトラ古墳の壁画は、古代日本と高句麗との深い関係を暗示しており、そのような関係は現代に到るまで、不幸な関係も含めて、さまざまな形で続いている。

にもかかわらず、朝鮮半島について、日本人の多くは長い間あまりにも無関心であった。最近になってようやく、サッカーや韓国ドラマ、さらには北朝鮮の拉致問題、核開発疑惑などを契機として朝鮮半島に目が向けられるようになり、たくさんのことが話題に上るようになった。これをブームと見る向きもあるが、日本にとっての朝鮮半島の重要性から考えれば、これくらいの関心を持つのはむしろ当然のことと言っていいだろう。

朝鮮半島におけるさまざまな問題について考えるとき、もはやそれらは我々にとって他人事ではない。それは、そこで何が起きても、日本や世界に甚大な影響を及ぼすからという意味だけではない。韓国ドラマに人々が熱中するのは、それが我々の心に深い感動を与えるからである。今まで忘れていた、あるいは見ないようにして生きてきた大切な何かを思い出させてくれるのだ。それは日本人に限らず、人であればすべからく深い共感を覚える何かである。

では、なぜ韓国でそのようなドラマが作られているかといえば、それは朝鮮半島が未だに抱える、南北分断という人類最大の悲劇と決して無関係ではない。最も深い悲しみを味わうとき、人は本当の意味で人生について、愛について、真実について真摯に考えるようになる。彼らの深い悲しみから沸き出した真実の叫びが私たちを揺さぶるのだ。

朝鮮半島のさまざまな問題について、その本質を深く追求すれば、その縮図は、我々の社会や人間関係においてもさまざまな形を取って現れていることがわかる。そして注意深く観察すれば、それらはすべて深いつながりを持っていることに気づくはずだ。故に、それらは単なる客観的な研究対象ではあり得ない。まさに我々自身の問題なのだ。そのことを忘れては決して問題の根本的な解決にはつながらない。

これからの研究の方向性は、その方向にこそ求められるべきである。学問を単なる机上の研究として終わらせないために。真の問題解決を目指すために。自分自身を知るために。

(二松学舎大学 東アジア学術総合研究所 通信 第15号 2005年7月11日)

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