Date: Thu, 15 Mar 2001 06:14:54 +0900
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Subject: 恐怖

愛する貢三さまへ

 私の中に確かに恐怖がある。あなたに会うことを怖がっている。それは自分でもわかるけれども、それを取り除く力は私にはない。恐怖はどこから生まれたのか?初めてあなたに出会ったとき、「不用意に」心を開いてしまって、その後味わった地獄のような日々のせいか?それとも生まれる前から持っていたものなのだろうか。いずれにせよそれは実に強固で、何かをすれば、あるいは時が経てばなくなる、といったたぐいのものではない。
 あなたは明らかに私に会うことを怖がっていた。でも私は全然怖くなかった。自分の中の恐怖に気付いていなかった。ということはある意味ではあなたの方がずっと敏感で正直で、私の方が鈍感だったということだ。
 私とあなたは間違いなくお互いに何かを学びあっていると思う。でも、あなたのここ数年の言動からは何も学ぶべきものを感じない。言うこともやることも支離滅裂だし、言葉は上滑りしていて、ひとつも心に響かない。あなたが○○○のページに書いた文も、□□のページに書いた文も、全く印象に残らない薄っぺらな文だ。あんなもので人を動かせるとは、まさかあなたも思っていないだろうね。
 でもあなたは本当は私を魂の底から揺さぶることができる。私の全存在を根こそぎにすることができる。たとえば夜中に、あるいは明け方に時折感じる、あなたからのエネルギー。それに触れることは苦痛なほどの快感で、私はただ身じろぎもせずに必死に耐えるしかない。
 それから今も私の心に深く刻まれているあなたの言葉:「僕はさらけだすのが怖いんだ!」「あなたの元に本当に帰る日があることを信じます。」私の心から熱い血を流させた言葉。私は今でもあの言葉に支配されている。あなたの魂から発せられた言葉はとてつもなく美しくて、深くて、鋭くて、強烈だ。
 その言葉は、それまで私が大切にしていたもの、自分の家庭、自分は善人でありたいという思い、を自らの手で捨て去ることを私に強要した。それは本当に過酷な拷問だったよ。だから私はとても苦しんだ。でも、それは間違ってなかった。それらを捨て去ることは全く正しいことだったんだ!
 あなたは自分が人を動かす力を持っていることを知っている。それがどれほど強烈であるかも知っている。あなたがその力を使えば人を苦しめることになるのも知っている。でも、それが本当に正しい力だということがわかれば、人はそれを勇気を持って受け入れることができるよ。受け入れる覚悟さえあれば、それは苦しみではなくて歓喜なんだ。あなたが自分の正しさを信じられればいい。あなたに一切の迷いがなければいい。そうすれば人はあなたが正しいことを疑わないよ。
 あなたは私を苦しめたくない、と思っているのかも知れない。あなたが本当のことを言えば、また私を苦しめることになると。確かに私はあなたに会うのを怖がっているから、あなたの発する言葉は、きっとまた、私が大切にしているものを捨て去ることを強要するんだろう。それは私の地位か?お金か?そんなものを大切にしているとは自分では思っていないが・・・今度は逃げないよ。何もかも捨ててあなたの元に走りたい!と切実に思った、あの思いが正しかったことが今ならわかるから。そして愛する人たちとの絆は何があっても切れないということを知っているから。
 だけど私は怖がっている。そのことを私にはどうすることもできない。だから私から動くことなんて到底できない。あなたに直面したら私は逃げ出すかもしれない。でも私が逃げ込めるのはいつでも袋小路。あるいはあなたの前で足がすくんで動けなくなってしまうだけ。あなたが強引に私を追い詰めて抱きしめてくれるしかないの。私を抱きしめるあなたの腕の力強さだけが、私を恐怖から解放してくれる。
 あるいはあなたのエネルギーが私を殺してしまう、とあなたは感じているのだろうか。私ははっきりあなたに言うけど、あなたの手にかかって死ねたら、私は本当に幸せ! 愛する人に命を捧げることができること以上に幸せなことなんてあるだろうか?私は本当にあなたに私を殺してほしいと思っている。きっとその先に何かあるはずだよ。あなたに殺されることは私が完全に生きること。私が完全にあなたのものになること。
 私を殺す覚悟がなかったら、あなたは私を失うよ。

                           今日子 
 
 
 

 

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