Date: Wed, 21 Mar 2001 05:24:59 +0900
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Subject: 墜落するものには翼がある

 あなたはさっき、私のお腹を踏み付けたり、首を絞めたりしたかい?だって、そんなふうに感じたから。苦しかったけど、いやではなかったよ。あなたがそんなふうにでも、あなたの辛さを直接私にぶつけてくれたら嬉しい。だってそうしてくれれば、私は少しでもあなたを助けてあげられるじゃない。
 92年、ちょうどあなたに出会ったころ、WOWWOWで韓国映画の特集をやっていた。日本語の題名は忘れたけど、韓国名は直訳すれば「墜落するものには翼がある」という題だったよ。李文烈という作家の同名の小説を映画化したものだ。
 とても頭が良くてエリートコースを走っていた、けれどもとても純粋な大学生の青年がある美しい女性に恋をする。彼は自分の思いが抑えられなくて同棲するんだけど、親の反対で引き裂かれてしまう。お前の出世のじゃまだと言ってね。彼はその後親のすすめで結婚するんだけど、どうしても他の女性を愛することができなくて結局離婚する。それから何年も経って、二人はアメリカで偶然再会して、結婚する。でも、この女性はとても奔放な人でお金を浪費し、他の男と遊び回ろうとするんだ。男は仕事も何もかもうまく行かなくなってしまう。男が嫉妬して、心配すればするほどますます他の男と深い関係になってしまう。男は追い詰められて結局その女性を殺してしまうんだ。でも死ぬ直前にその女性はこう言うんだよ。「これでいいのよ。でもなぜあなたは私から離れて行かなかったの?何度も機会をあげたのに・・・」
 この映画を見て、あなたのことを思った。なぜかあなたに似ている、と思ったんだ。そして、それまで全く気付かなかったいろいろなことを感じたよ。男の人が、女を欲する気持ちがどれほど切実で悲しいものなのか。本当の愛とは、「殺したい」「殺されたい」と思うほど激しいものなのではないか。二人が同棲する前に、女性の方は、自分は醜い女性だからあなたと結婚することはできない、と彼を避けようとするんだけど、彼は彼女を探しまわって追い詰めて、怒って首を絞めるんだ。そのあとで彼女はこう言って同棲を決意する。「あなたに首を絞められて死にそうになったとき、私は幸せだった。本当のエクスタシーを感じたのよ。」
 でも、どうして彼は彼女を本当に殺してしまうようなことになったのだろう?私は作者の男性の考えは間違っている、と思った。彼は、男が女を抱くことは堕落だ、と思っているんだ。だから自分を制御できなくなってしまうような女性に心を許してはいけない、とどこかで思っている。それで結末がこんなふうになってしまった。いや、それは堕落だ、と言ってもいいかもしれない。でも、こんな世の中に合わせて出世して生きる必要がどこにあるの?むしろ堕落する方がずっとまともだよ。
 奔放と言えば私も奔放かもしれない。すべての男性に心を許しているから。でもここ数年は誰も私を誘惑しようとしないよ。あなたが私を信じていてくれる限り、私は決してあなたを裏切れない。
 あなたと会えたら、私は何をしたいのかって考えてみるけど、何も思い付かない。ただ抱いて欲しいだけ。あなたと暮らせたら私は四六時中あなたとセックスしてるかもしれない。それ以外にしたいことないの。でも、それはいけないことかな?それ以外に、本当にする価値のあることってあるのかな。私は太陽を見ていると、ときどきあれは愛しあうふたりじゃないかって思うんだ。二人の出す幸せのエネルギーの光がすべてを育てる力になっているんじゃないかって。
 私もあなたとふたりでそんな存在になりたい。  

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